イラストレーター界でちょっと気になる現象が広がっています。
江口寿史さんと古塔つみさん
ふたりの名前が思いがけず並べられるようになった今、どんな背景があるのでしょうか。
なぜ、過去の作品までもが見直されているのか。
そして、見る人の感覚は、いつから変わってきたのでしょうか?
表に出ることのなかった“関係”と、作品の裏にあるリアル
ただの「トレース」という言葉だけでは説明できない何かが、そこにあります。
この記事では、ふたりにまつわる出来事をもとに、いまのイラスト業界の“かたち”を、ていねいにたどっていきましょう。
江口寿史と古塔つみの関係

2025年10月
江口寿史さんの“トレース疑惑”が広まり、SNSを中心に話題になりました。
このニュースを見て、「あれ?この展開、どこかで見たような……」と思った人も多かったのではないでしょうか。

2022年に大きく炎上した古塔つみさんのトレパク騒動と、あまりにも似ているのです。
SNSでは「第二の古塔つみでは?」「初代古塔つみじゃん」という声も出て、ふたりの作品や背景が比較されるようになりました。
では、ふたりの間にはどんな“関係”があったのでしょうか?
直接的に師弟関係だったわけではありません。
しかし、古塔つみさんが江口寿史さんに強く影響を受けていたことは事実です。
露、伊、日三ヶ国4人の絵描きが集まった吉祥寺の夜。イリヤ・クブシノブ、ルカ・ティエリ、古塔つみが描いた店の壁。おれのは5年前に描いたもの。 pic.twitter.com/ztyM583Xtd
— 江口寿史 (@Eguchinn) November 17, 2021
表現スタイルの共鳴
古塔さんのキャッチコピー「あっ、女子しか描けません。」は、どこか江口さんのユーモアを思わせるもの。
スタイルの面でも、色づかいや構図、モデルの雰囲気など、共通点がかなり多いと感じられます。

過去の“共演”と活動フィールド
2021年には、吉祥寺の壁画プロジェクトにふたりそろって参加しています。
直接コラボしたわけではないものの、同じ場に並んだことで「似ているふたり」という印象を強めました。
ふたりとも、広告・ファッション・音楽・出版などの分野で活躍しており、似たような場所で求められていた存在だったとも言えます。
吉祥寺サンロードアーケードの出入り口の看板は11月からまたおれの絵になってるね🤣。これは2019年に描いた絵。言ってくれれば新しい絵描くのに。 pic.twitter.com/caxa2bzX4J
— 江口寿史 (@Eguchinn) November 2, 2022
騒動で生まれた“すれちがい”
2022年の古塔騒動の際、江口さんはSNSで
「師匠じゃない」「無邪気にやってるんだと思う」とコメント。
これにより、いったん距離を取った形となりました。
しかし、2025年に江口さん自身が疑惑の対象となったことで、再び名前が並べられることに。
まるで鏡のように関係性が逆転したかのような展開に、多くの人が驚きました。

江口寿史と古塔つみの共通点5つ

江口寿史と古塔つみ、なにがそんなに似ているのか?
ここでは、5つの共通点からその本質をさぐっていきます。
1.SNS画像の無断トレース
まず最初の共通点は、ネット上にある写真をトレースしていたこと。
江口さんはInstagramユーザーの横顔写真を、古塔さんはPinterestや海外写真家の画像をトレースしたと指摘されています。
とくに、「女性の横顔やポーズの再現度が高すぎる!」と話題に。
「線がぴったり重なってる」「見た瞬間に元ネタがわかった」という声も出るほど。
画像を反転させたり、ホクロを消したりなどの微調整はありましたが、ほとんど“そのまま”と感じる人も多かったようです。

2.商業目的での使用
ふたりとも、商業案件でそのトレースを使っていたことも問題となりました。
江口さんはZoffの広告やデニーズのキャンペーン、書籍やポスターなどで多数の作品を展開。
古塔さんも、音楽CDのジャケットや書籍、展示会などに作品を提供していました。
つまり、お金が発生する仕事で無断利用されたということ。
これはさすがに「プロとしてどうなの?」という声が出るのも当然です。
📣#ポチャポチャアートフェス の第2弾として、クリエイター7名とのコラボ作品を本日初公開!#あの子とポッチャマ をテーマに、ポッチャマのぬいぐるみを持っていたり、グッズを身にまとった子を自由に描いていただきました🎨
— 【公式】プロジェクトポッチャマ💙 (@prj_pochama) November 25, 2021
本日は、古塔つみ(@cotoh_tsumi)さん によるイラストを公開します✨ pic.twitter.com/FFUI4uMFly
3.ブーメランになった過去発言
江口さんには、かつて古塔つみさんを批判した過去の発言があります。
2022年、古塔騒動が起きたとき、江口さんはXで
「ネット画像はフリーだと思ってる意識の低さ」
と投稿しました。
しかしその3年後、自分も同じようなトレース行為で疑惑をもたれ……
「これは完全にブーメランじゃん!」と炎上するきっかけに。
「他人には厳しくて自分には甘い」──そんな印象を持たれてしまったのかもしれません。
「ネット上の画像はフリー素材だと思ってる意識の低さ」とかトレパク叩いてたくせに、自分がトレパクしても一言も謝罪せず「注目してくださいね」って…さすが大先生の尊大ブーメランは芸術点高いですね😇
— 茉莉花べにこ (@beniko71) October 3, 2025
今後先生のイラストをトレパクやAIで自作発表しても事後報告すれば快諾してくださるってこと? https://t.co/A2luNMPjry
江口寿史、よくここまでトレパクしまくりながら、他者のトレースを批判したり、AI生成を禁じたりできたよな。
— ba_a (@ba_aba_a_a) October 7, 2025
そのうえ偉そうにメディア出演や個展開催までしていて、厚顔無恥としか言いようがない。
これらの権利侵害の盗作で人を騙して大儲けしてきたわけなので、刑事罰も受けるべきだと思う。 https://t.co/1vOTmGE1D1 pic.twitter.com/W7bDlCq4rx
4.画風やテーマがそっくり
ふたりの作品には、女性を中心にしたポートレート風のイラストが多いという特徴があります。
やわらかい色使い、繊細な線。
どちらの絵も、まるで同じ路線をたどってきたかのように感じられます。
古塔さんはインタビューで、江口さんに影響を受けたと語り、「師匠のような存在」とまで言っていたことも。
それだけに今回の騒動で「ふたりとも似たやり方だったのか……」と感じる人も多く、皮肉な展開となりました。

5.業界全体へのインパクト
このトレース問題は、ふたりだけの話では終わりませんでした。
SNSでは「この世代のイラストレーター、大丈夫?」といった声も出て、業界全体の倫理観に注目が集まっています。
「昔は許されてたけど、今はアウト」
そんな価値観の変化も、この騒動を大きくした原因のひとつかもしれません。
トレース騒動の背景と今後の影響

江口寿史さんの騒動は、「画像をそのまま使ったのか?」という疑問だけにとどまりません。
もっと大きなテーマが浮かびあがってきています。
ネット時代に変わった常識
「ネットにある画像=使っていい」という考え方は、もう通用しない時代です。
SNSや画像検索で元ネタがすぐ見つかってしまうからこそ、一度問題になれば、過去作まで検証されることも。
これがデジタル時代ならではの“検証文化”なんですね。
【悲報・江口寿史先生のトレパク疑惑の画像、続々と集結開始】
— 爆炎の大佐 (ハートを5倍で返したい男) (@BAKUEN_NO_TAISA) October 6, 2025
イラストレーター江口寿史氏の広告イラスト等で写真の無断トレースが問題となり、過去作品でも特定が始まっている。
Zoffやデニーズの広告にも疑惑が浮上し、各社の撤去対応等などが相次いでいる。
(関連)https://t.co/pzHGiZxqe5 pic.twitter.com/jgOgeAgNVi
世代による価値観のギャップ
江口さんは雑誌全盛期を生きてきた世代。
当時は企業が著作権を処理してくれたため、作家本人の意識はそれほど問われませんでした。
でも今は違います。
SNSで活動する若手は、すべて自分で管理し、責任も背負う時代です。
この“感覚のズレ”が、問題をより複雑にしているのかもしれません。
「江口寿史のことをよく知らない」という若い世代が居るのは当たり前で、1980年代のアニメ化されたジャンプ漫画なんて知らないという意味で客観的には全盛期を過ぎてる大御所だから仕方が無い。中年世代には絵柄の革新のキッカケになった大友克洋と同じような神格化がされているけど。
— ǝunsʇo ıɯnɟɐsɐɯ / メタバース炎上対策専門家 (@otsune) October 7, 2025
企業にも波及する問題
Zoff、デニーズ、ルミネ荻窪など、江口さんの作品を使っていた企業も対応を迫られています。
広告の取り下げやグッズ販売の中止など、被害は広がる一方。
時間をお金を使ってグッズを購入したファンにとっても、このような騒動が起こると「外で人に見られるのが恥ずかしい」と感じてしまうことがあるでしょう。
今後は、作家の倫理だけでなく、企業のリスク管理も重要なテーマとなりそうです。
【声明も】漫画家・江口寿史氏の「トレパク」騒動、各所対応に追われるhttps://t.co/jtZCs6UIzS
— ライブドアニュース (@livedoornews) October 5, 2025
『中央線文化祭2025』の告知ビジュアルを発端に騒動になり、各社が対応に追われている。江口氏が過去にイラストを手がけたZoffとデニーズが、事実関係や制作過程を確認中との声明を発表した。 pic.twitter.com/xdjO6lewaj
江口寿史大先生のトレパク問題が次へ次へと取り沙汰されていますが、Loose Drawingは“自由に使える表現”として、自由にトレパクしたりAIに食わせてください。
— Loose Drawing | フリーイラスト (@loose_drawing) October 4, 2025
コンテンツが個の所有から解き放たれ、社会共同でアップデートされるのを私たちは期待しています。 pic.twitter.com/GmTsZgLVcL
AI時代の「参考」と「模倣」
さらにややこしいのが、AIによる画像生成の問題です。
AIがどこから学習しているのか分からない時代。
ますます「これは誰の作品?」と見分けるのが難しくなっています。
トレースか、インスパイアか、それともAIか──
その境界線がどんどん曖昧になっていることも、今回の騒動を考える上で欠かせません。
江口さんというイラストレーターの方が写真のトレパクをした?ことで燃えているようですが、このケースの場合は、実在する方の肖像権を使用したことに関して問題が生じているので、AIで架空の人物を作ってそれをトレパクする、という形であれば問題ない、という理解でいいんでしょうか…。
— オジチャン (@crypto_ojichan) October 3, 2025
これから求められるもの
これからの時代、ただ「パクらない」だけでは不十分です。
- 素材の出典を明示すること
- モデルや写真家に許可を取ること
- 炎上した時には、誠実に説明すること
透明性と対話こそが、クリエイターの信用を守るカギになるのではないでしょうか。
まとめ
江口寿史さんと古塔つみさんの騒動は、偶然の一致ではなく、深い共通点を持った構造的な問題でした。
「参考」と「模倣」のちがいはどこにあるのか?
「創作」とは、どこからが“自分の表現”なのか?
そんな疑問が、ふたりの作品と出来事を通して浮かびあがってきます。
これからのイラスト業界が、どのように変わっていくのか。
そして、私たちは作品の“背景”にどう向き合うべきか。
そんなことを考えるきっかけとして、今回の騒動を受け止めてみてはいかがでしょうか。
